開発システムいよいよ始動
カマキリが高いところに巣を作っているのでこの冬は雪が多いぞ、と宴会の話題になっていましたが、確かに的中のようで、5cmくらい積もりました。
例年なら積もっては太陽で消され、暫くしてまた積もる、を繰り返すのですが、今年は昨年末より根雪になっています。
さて、開発室の状況です。回路設計キャド、基板設計キャド、FPGA設計ツール、DSPボード設計ツール用などを含め、PC 6台が昨年末に稼働状態になりました。
デジタル・チャンデバ、周波数EQ、位相EQの要になるDSPボードを開発するためのシンクロスコープやロジックアナライザもスタンバイ完了です。
ところで僕のサラリーマン時代の職業はレコーディング・エンジニアで、デジタル機器の設計・製作などはオーディオの趣味が嵩じた自己流です。
欲しい物が世の中で製品化されていないとき、商品のグレードが自分の物差しに当てはまらないとき、そんなときにだけ、にわか電気屋になります。
D.Cube(DSPドライブのサブウーファ)の設計が10年前ですから、ブランクが大きすぎて部品やら、設計ツールやらの世代交代が激しくて、今回の復帰は大騒動です。
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ブログを書きつつ昔の事を思い出して30年ぶりに稲垣潤一のアルバムを聴いてみました。1982~87年の作品です。69年東芝レコード入社、87年サラリーマン卒業ですから、卒業後の方がずいぶん長くなったな、と感慨ひとしおです。
30年を経て自分の作品を一気に聴いてみると時代の変遷(スタジオと録音機器の変遷)がよく分かります。
一枚目の246:3AMは東芝EMIの第一スタジオで録音したアルバムで、録音スタジオの壁はグラスウールに穴あきボードのデッドルーム。モニタールーム側もグラスウールをガラスクロスで覆ったデッドルームでした。
音楽に使えるような環境では無いのですが、マルチチャンネル録音が主流であった当時としては標準的なスタジオの姿です。
マイクロホンに入る音も硬い(パルス)ばかりで潤いがなく、出来上がった作品も同類の音になります。
二~四枚目は僕が設計した東芝EMIの第三スタジオによる録音で、スタジオ設計コンセプトを根底からひっくり返して、石とガラス(ソロブースやスタジオとモニタールームの窓)で作ったスタジオです。その後主流となったライブ・スタジオの原型です。
レコーディング機材もアナログ機器の爛熟期で、性能も音も頂点に達していました。
レコーディング・コンソールはトランジスタによるディスクリート回路で構成されたNeve社製アナログコンソール(下記写真はNeve社製ですが、型番違い)。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:SonicRanchNeveConsole.jpg
24chマルチトラック・テープレコーダーとマルチトラックからステレオミックスを記録する2chマスターテープレコーダーも Studer 社製の A80 だったか A800 (テープ幅 2インチ & 1/2インチ、テープスピード 76cm/sec のアナログテープレコーダ)。
http://www.liebrand.nl/la/a80.html
http://oldline.air-nifty.com/analog/2009/01/post-1.html
ライブなスタジオとアナログ機器による Shylights, J.I, Personally のサウンドは 1作目に比べて奥行き方向の佇まいが格段に深く表現できています。
そして 5作目の NO STRINGS あたりからスタジオ機器の音が下降線を辿るデジタル録音の時期に突入します。
デジタル機器は日本のスタジオに真っ先に導入され、音が悪くて物議を醸したのですが、少し遅れてアメリカで下記の事件がありました。
「アナログオーディオ技術を駆使する録音スタジオのエンジニアたちは、デジタルオーディオに拒否反応を示したのだ。価格はアナログタイプの機器より1けた高い。しかも、音質が硬く、音楽的でない、という評価であった。
彼らの一部は、MAD(Musician Against Digital=デジタルに反対する音楽家たち)というグループを結成し、AES(Audio Engineering Society=米国音響技術者協会)学会などで「デジタル反対!」と派手にアピールした」
http://www.sony.co.jp/SonyInfo/CorporateInfo/History/SonyHistory/2-10.html
初期のデジタルレコーダーは悲惨な音でありました。特にUマチックのVTRを利用した2トラック・レコーダーの音が、高音域にリンギングを伴う勘に障る音で、マルチトラックからのステレオミックスをUマチックに記録した楽曲は、オムニバス・アルバムに使えないほどアナログマスターとの差が歴然でありました。
この時期、ステレオミックスのマスターがアナログテープであったとしても、CDを作るには一度Uマチックにコピーする必要があり、CDが商品化された直後の数年分のCDはゴミですね。
原因は100dB/oct 以上の高域遮断特性を持つアンチエイリアシングフィルタをアナログ回路で作ったからであろうと思います。後にオーバーサンプリング方式のデジタルフィルターが開発され、この問題点は解消しています。
http://www.mech.tohoku-gakuin.ac.jp/rde/contents/course/controlII/digicont.html
アナログのステレオマスターに記録されたアルバムはCDマスターの作り直しで正常な音に復活していますが、Uマチックのレコーダーに直接ミックスダウンした楽曲の音はゴミのまま復活不可能です。
更にこの時期、ミキシングコンソールも Neve に比べて半分以下の価格の SSL が蔓延り(音は半分より何倍も悪い歪みの多い汚れた音)、オーディオマニアが嵩じてレコーディングエンジニアを志した経緯から、この状況が許せなくて、足を洗う準備が無意識のうちに始まった時期のように思います。
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備忘録が長くなってしまいました、本題に戻しましょう。
■DSPボードを設計しようとFPGAの開発ツールを調べてみたところ、QuartusIIの回路図設計によるコンパイルが不可能となって、VHDL言語を使わないと設計が出来ないのですね。困った々。
DSPボードの周辺に必要な回路はアドレスデコードとメモリー、PCとの通信に使うUSBインタフェース程度ですから、回路図入力で書いてしまえば一週間で完了するのに、VHDLの学習は1~2ヶ月かかるかもね・・。技術が進歩しすぎると余計な手間がかかって、小規模な設計が出来れば十分なアマチュアには厄介なだけです。
下記の入門書を購入予定です。もっとお勧めの本があったら教えて下さい。320C6713のEVAボードをソフトウエアの評価用に貸し出し中なので、若干時間の余裕があります。
http://shop.cqpub.co.jp/detail/1080/
開発用の測定器類は10年ぶりくらいのお出ましなので壊れているかも・・。と思いつつ、火入れをしました。大まかOKのようです。
真田に引っ越して以来、デモルームの設計施工に追われており、これらの機器は宝の持ち腐れ状態です。
ど田舎で周辺は畑と山ばかりですが、温泉と食事くらいは調達できるので、測定器が必要な方、使って下さい。東京からであれば軽井沢を少し超えて菅平の近くです。
■デモルーム用のDSPシステムは設計情報を公開してオーディオ仲間で共有し、DSPに接続される関連機器の開発や、関連ソフト開発のプラットホームにする予定です。
スキルのある方の参加を歓迎します。高品質の開発機器やソフトウエアは、妥当な価格であれば販売のお手伝いをします。
開発に必要であれば、開発室も解放します。
ロジックアナライザは Iwatsu SL-4641A(400MHz) SL-4602(?) 共にOKのようです。4602は僕が30歳半ばの頃の購入ですから、30年ノーメンテで動いています。ロジアナが壊れたらデジタル機器の開発はお手上げです。
hp の MULTIMETER と Function Generator も同時期に購入して既に2台目ですが、Function Generator は、またまたご臨終でした。やはり日本製が一番。
シンクロスコープは Iwatsu SS-7825(250MHz) OK。Tekutronix THS720(100MHz) もOK。
hp のファンクション・ジェネレータはご臨終でした。とりあえずおもちゃの発信器を用意。AD-103D(右側)
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ついでにスピーカーの手前 1m 地点の音圧を測ってみました。
やはり机上計算のように 110dB 分のパワーが出るパワーアンプが不可欠のようです。
SPの能率 94.5dBで40W(ツィータ), 92dBで70W(スコーカ), 88dBで140W(ミッドバス), 86dBで260W(ミッドバス),
サブウーファは低域をブーストするのでSPの能率からの計算値は無意味ですが、とりあえず83dBで520Wです。ここまではアナログアンプの許容範囲。
D.Cubeの下の帯域のアンプは、きっと5,000Wくらい(SPを5本パラ、アンプもパラにすれば1,000 x 5 )必用で、この帯域が悩みの種です。
金田式の回路を予定しており、借用中のアンプでテストを重ねていますが、アイドリング電流の安定化をもう一工夫しないと大出力化は危険ですね ・・・。
ブログが終わったので、今日はスキーかな! 外はピーカンのスキー日和です。
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LP も CD も、最終のマスターリングで大幅にサウンドが変化します。昨日聴いた稲垣潤一の TEN;Junichi Inagaki の CD 10枚セットはファンハウス。
現在はユニバーサルミュージックですが、マスターリングにどれくらい差があるのか? ちょっと興味があってAmazonに JI を注文しました。
CDが届いたら書き加えます。
聴いてびっくりですね、サウンドの雰囲気が大違い(理由は後述)。アーティストにとってレコード会社やレーベルの移籍はリスクが大きいことが分かります。
オリジナルのステレオマスターから市販のCDを作るとき、リミックスを担当したエンジニアやアーティストがマスターリングに立ち会って市販品の音質や音量を決め、再版時にもそのデータが参照されることで新たな指示が加わらなければ同じ音質が維持されるシステムになっているのですが(20年前のシステム、現在は?)、
発売元が変われば当然ながらそのデータは破棄されてしまいます。
さて2枚のCDを比較して何が違うのかと言うと、ユニバーサルミュージックのCDをファンハウスのオリジナルと比較してみると、再生音量が2倍(+6dB)になっているんです。
オリジナルがフルレベルで記録されているのだから、記録データを押しつぶすなどの荒技を使わない限り6dBの音量アップは不可能な訳で、音の汚さを覚悟の上でレベルを上げる手法を今さらヒット狙いではない旧譜に当てはめるなど、手抜きもいいところです。
これはアーティストまたはプロダクションの管理不足とも言えますが・・。
愛情を注ぐことなく、いつも通りの流れ作業の手順でマスターリングを施すとJポップの音になる、という見本を見たような気がします。
音が歪みっぽく硬くなり、大きな音が押さえられて背景の音が大きくなるので、音がごちゃごちゃしてうるさくてかなわない。
ゲストハウスで比較試聴出来ますよ。
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SPを部屋のセンターに配置し、石膏ボードの壁を裏返しのSVパネルで塞ぎました。音数が増えて再生音の密度感がアップし、音が弾むようになりました。とにかく石膏ボードはxですね。
D.Cube2HXも加えてしまった。
D.Cube有りを聴いてしまうと、もはや無しには戻れない。
1台設置と2台設置で、臨場感の再現に大きな差がでることが分かっているのだが、 1台しか残っておらず、急遽製作予定。
ところで閉空間で発生する閉塞感(逆位相に類似の圧迫感)の原因がつかめたと思います。実験棟での実証実験を待たねばなりませんが、3月着工の32畳デモルームの壁構造&天井構造がいよいよ決定になります。
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